ウエストナイル熱(脳炎)とは?
ウエストナイル熱とは
ウエストナイル熱は、日本脳炎ウイルスに極めて近いウエストナイルウイルス(WNV)によって引き起こされる感染症で、最初アフリカで発見されました。
ところが、ご存知のように1999年に突然、ニューヨーク市で発生し、またたく間にアメリカのほとんどの州に拡がりました。
人や物の流れが盛んになった今日、日本への侵入が懸念され始めています。厚生労働省でも感染症法の四類に指定し、対策強化に乗り出しました。
現在、この感染症の侵入や流行を防ぐ最も有効な手段は、ウイルスを媒介する蚊を防除することなのです。
日本に広く分布する多くの蚊が、伝播能力をもっていることが分かっています。
万全で適切な対応が侵入や拡大を防ぎます。
この病気はこれまでに主にアフリカ、中近東、西アジア、ヨーロッパなどで流行し、アメリカ大陸にはありませんでした。発生の原因として鳥と蚊が関与し、人にはウイルスを保有する蚊が吸血することによって伝播されます。
日本脳炎ウイルスと極めて近い関係にあるこのウエストナイルウイルスは、人間の体内で増殖し発症するのがウエストナイル熱です。感染して発症すると発熱し、重症化すると脳炎を引き起こすことがある恐ろしい病気です。
アメリカは2002年末までに4100名の患者が報告され、272名もの人が亡くなっています。
対策に必要なこと
アメリカでの突然の大流行に見られるように、この感染症は日本の都市でも何の前触れも無く発生する恐れがあります。まだ発生要因の全てが分かっているわけではありませんが、蚊対策が十分でなかったため拡がったという側面は否定できません。ウイルスを持った蚊の吸血により渡り鳥が感染し、渡り鳥が飛来した各地域でまた他の蚊へ感染、そしてその蚊が人を吸血し感染していくことが考えられます。
結局、各家庭における個別の対策も重要ですが、もっと広域的、組織的な蚊対策がこの感染症の発生防止の決め手となります。人での発症が確認された時には、すでに多くのウエストナイルウイルスを持っている蚊が、あちこちに拡がっている恐れがあるからです。
蚊対策の方法
蚊の対策には、幼虫対策と成虫対策があります。
そして、蚊は種類によって幼虫の発生源が異なっています。したがって、まず発生している蚊の種類を突き止め、その結果でどのような対策を立てるかを決めなければなりません。もっと具体的にいえば、多くの種類が媒介に関与しますから、地域ごとに危険性の高い蚊の発生源地図を作ることがこの感染症対策に役立ちます。
このような対策、病気が発生してからではなく平常時から実施しておかなければなりません。
幼虫対策
幼虫(ボウフラ)の発生源は水域です。
ヒトスジシマカやヤマトヤブカ等は空き缶や古タイヤ、雨水枡、墓地の花立など小さな水域が発生源となります。アカイエカやチカイエカは比較的大きな水域が対象となります。
▶ 幼虫対策薬剤
- スミラブ粒剤(脱皮阻害粒剤)
- スミラブ発泡錠(脱皮阻害発泡剤)
- デミリン水和剤(脱皮阻害水和剤)
- デミリン発泡錠(脱皮阻害発泡剤)
- ボンフラン(水生系不快害虫用殺虫発泡剤)
- ハイカプシン粒剤(発生源対策用粒剤)
成虫対策
緊急時の対策として重要です。
繁みや草むらなどへの薬剤散布が中心となり、風向きや周辺環境への配慮が必要です。
▶ 成虫対策薬剤
日本に生息する主な蚊の種類(ウエストナイルウイルスの媒介蚊)
種類 | 特徴と生活 | 発生源 |
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アカイエカ | 中型で赤褐色、腹部各節の基部に黄白色の紋がある。 に分布し、屋内でも最も普通に見られる。 吸血活動は夜間に盛んであり、鳥類にも好んで吸血するが、牛馬はあまり刺さない。 発生盛期は梅雨期から9月頃である。 チカイエカはビルなどの地下水域から発生し、冬の蚊と異なり冬期休眠しない。 |
[中水域] どぶ、防火用水 雨水枡、浄化槽 |
チカイエカ | ||
ネッタイイエカ | ||
コガタアカイエカ | アカイエカよりは小型の暗褐色の蚊で、口吻の間接部に白帯がある。 日本全土に分布し、7月から8月に発生するが発生期間は短い。 |
[大水域] 水田、池、沼 灌漑流溝 |
シナハマダラカ | 大型種で翅に黒色斑点がある。 日本全土に分布し、4月頃から11月頃まで発生し、農村に多く畜舎に侵入する。 |
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ヒトスジシマカ | 小型で黒く、中胸背板の中央に1本の白い縦線がある。 本州以南に分布している。 |
[小水域] 墓石の花立、空缶 古タイヤ、竹やぶ 樹洞の水たまり |
トウゴウヤブカ | 中型で黒っぽい体に黄色のきれいな斑点を示す。 日本全土に分布する。潮だまりにも発生する。 |
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ヤマトヤブカ | 体は黄褐色の蚊で脚部には5本の黄色い縦縞がある。 日本全土に分布する。 |
引用:日本防疫殺虫剤協会資料